月日は百代の過客にして

月日は百代の過客にして、行き交う年もまた旅人なり。云々。夏、秋と半年が過ぎてしまった。

今年の夏も厳しく、秋の台風は日本列島に大きな傷跡を残した。消費税率も上がり、世の中のは空前のラクビーブームで沸く。

病院業務は粛々と進み、夏場に持ち越した避妊、去勢手術で忙しい。

昨日、心に刺さる事があった。患者(イヌ)になにげに漢方薬の処方を提案したらオーナー(飼い主)が

しごくいぶかしげな表情になった。よくよく話をお聞きすると、自らのこむら返りの薬をヒトの漢方薬局より購入、服薬したが全く効果なく、逆に副作用でひどい目にあったとのこと。しかも、必ず?絶対に!効くというお墨付きだったらしい。(それも伝聞なので真偽は確かめられないが…..)

漢方薬に眉唾のオーナーに漢方薬を勧めるという地雷を踏んで?踏ませてしまってのである。

初めから漢方や代替療法を信用していないオーナーには提案しないのであるが、サプリメントも飲ませているし、割とつきあいの長いオーナーだったので油断していたこちらが悪いのだが、それからが大変。

中医学のイロハからはじまり、弁証や臓腑論などをなるだけ簡素にわかりやすく説明。わかりやすくといっても限度もあるし、第一信用していない人にその効力や功罪、中医学の理論哲学を説明しなければならなくなり、たいそう大汗をかいた。

浅学な者や売ればそれでよいという者(獣医師、薬屋)に限って必ず、絶対効くという台詞を多用する。そもそも中医学的な診断なしで症状漢方という流れ自体如何なものかと思う。難解さを大上段に構えて権威主義を気取るつもりは毛頭ないが、簡単便利だけ重宝されて、その真髄や気構えという点がなおざりにされる。弁舌流暢さに騙されたり、口車に乗って損や苦労をするなんて話は世の中至る所で聞く話である。

せめて言葉を発せられない、言葉が通じない動物を相手にしている我々だけでも真摯に獣医療に邁進したいものである。サンプルでもたせた漢方、効果を出せれば、オーナーの考えも変わるのではないかと祈る気持ちである。

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